はじめに
会社売却(M&A)が成立し、いよいよ決済の日を迎えると、
「買い手から売却代金はどこに振り込まれるの?」
「仲介会社を利用している場合、一度仲介会社に振り込まれる?」
「株主が複数いる場合は、誰が売却代金を受け取るの?」
と疑問を持つ方もいるでしょう。
特に複数の株主がいる会社では、数千万円、数億円という株式譲渡代金をどのように受け取るのかは非常に重要なポイントです。
今回は、株式譲渡によるM&Aを前提に、売却代金の基本的な支払い方法や、複数株主の場合の考え方、エスクローについてわかりやすく解説します。
株式譲渡代金を受け取るのは「会社」ではなく「株主」
まず理解しておきたいのが、
株式譲渡によって会社を売却する場合、原則として株式を売却するのは会社ではなく株主だということです。
例えば、
Aさん:70%
Bさん:20%
Cさん:10%
という株主構成の会社があり、3人全員が保有株式を買い手へ譲渡するとします。
この場合、株式の売主はAさん、Bさん、Cさんです。
そのため、株式譲渡代金についても、それぞれの株主が保有する株式の譲渡条件に応じて受け取ることになります。
会社の銀行口座へまとめて売却代金を入金する、という考え方とは異なるため注意しましょう。
売却代金の支払い方法は契約によって決まる
実際にどの口座へ振り込むのかは、
株式譲渡契約などで定めた決済方法によって異なります。
例えば、
買い手から各売主株主へ直接振り込む方法も考えられます。
一方で、
取引の安全性を高める目的などから、第三者を介して決済する仕組みが利用される場合もあります。
重要なのは、
「M&Aなら必ずこの振込方法になる」
という一律のルールがあるわけではないという点です。
最終契約や決済に関する取り決めを確認する必要があります。
エスクローとは?
M&Aの決済で利用されることがある仕組みの一つが、
「エスクロー」です。
エスクローとは、
買い手と売り手の間に第三者が入り、売買代金などを一時的に預かることで安全な取引を実現する仕組みです。
例えば、
買い手が第三者の管理する口座へ買収資金を入金し、
株式譲渡など契約上の条件が整ったことを確認したうえで、
売り手へ資金を交付する方法があります。
高額な資金が動くM&Aでは、
決済の安全性を高める方法の一つとして利用されることがあります。
「仲介会社を経由する=エスクロー」とは限らない
ここは混同しやすいポイントです。
買い手から仲介会社などを経由して売り手へ資金が移動するからといって、
必ずしもすべてがエスクローに該当するとは限りません。
エスクローでは、
第三者が契約に基づいて資金を預かり、
定められた条件が満たされた後に資金を交付するという仕組みが重要になります。
どのような仕組みで資金を預かり、
どのような条件で売主へ支払われるのかは、
利用する仲介会社や金融機関、エスクロー事業者、契約内容などによって異なります。
M&A成立前に決済方法を確認しておきましょう。
株主が複数いる場合はどう振り込まれる?
株主が複数いる場合、
最も重要なのは、
「誰が何株を、いくらで売却するのか」
を明確にすることです。
例えば、
会社の株式譲渡総額が1億円で、
Aさん:70%
Bさん:20%
Cさん:10%
を保有しており、すべて同一の1株当たり価格で売却すると仮定します。
単純化すると、
Aさん:7,000万円
Bさん:2,000万円
Cさん:1,000万円
という形で、それぞれが株式譲渡代金を受け取ることになります。
実際の金額は、各株主の保有株式数や株式譲渡契約で定められた条件によって決まります。
仲介会社などが一度資金を受け取る場合は?
決済スキームによっては、
買い手が指定された第三者の口座へ売却資金を入金し、
そこから売主へ資金が交付される形になる場合があります。
売主が複数いる場合には、
契約や決済指図などで定められた金額に従って、
各売主の指定口座へ資金を振り分ける設計が考えられます。
例えば、
A株主の指定口座
B株主の指定口座
C株主の指定口座
へ、それぞれの株式譲渡代金を送金する形です。
ただし、具体的な送金方法は案件ごとの契約や利用する決済サービスによって異なります。
「仲介会社が入っているから自動的に株主ごとへ振り込まれる」と考えず、クロージング前に確認しておくことが重要です。
仲介手数料は株式譲渡代金とは別に考える
もう一つ注意したいのが、
M&A仲介会社へ支払う成功報酬です。
株式譲渡代金と仲介手数料は別のものです。
例えば、
株式譲渡代金が1億円だからといって、
必ず1億円がそのまま株主の手元へ残るとは限りません。
売主側がM&A仲介会社と契約している場合には、
契約内容に基づいて成功報酬などを支払うことがあります。
誰が仲介会社との契約当事者になっているのか、
成功報酬はいくらなのか、
いつ支払うのか、
どのような方法で支払うのか、
といった点を事前に確認しておきましょう。
複数株主の場合、仲介手数料は誰が負担する?
ここも非常に重要なポイントです。
複数の株主が株式を売却したからといって、
仲介手数料について必ず持株比率に応じて自動的に負担するとは限りません。
誰が仲介会社へ報酬を支払うのかは、
仲介契約などの内容を確認する必要があります。
例えば、
代表株主が仲介会社と契約している場合と、
複数の売主が契約当事者となっている場合では、
取り扱いが異なる可能性があります。
売却代金の配分だけでなく、
仲介手数料を誰がどのように負担するのかについても、
クロージング前に明確にしておくことが大切です。
クロージング前に振込先を確認しておこう
M&Aの決済では、
非常に大きな金額が動くことがあります。
そのため、
クロージング直前になって振込方法を確認するのではなく、
事前に、
- 株式譲渡代金の総額
- 各株主の受取金額
- 各株主の振込先口座
- 買い手からの送金方法
- 第三者を介する場合の決済方法
- 仲介手数料の金額
- 仲介手数料の支払者
- 振込手数料などの負担
を確認しておくことが重要です。
特に株主が複数いる場合は、
金額や振込先の間違いがないよう、
仲介会社や弁護士、税理士などの専門家とも確認しながら進めましょう。
まとめ
株式譲渡による会社売却では、
売却代金を受け取るのは基本的に株式を売却した株主です。
株主が複数いる場合には、
各株主が売却する株式と契約条件に応じて、それぞれの株式譲渡代金が決まります。
決済方法については、
買い手から各株主へ直接送金する方法のほか、
第三者を介して資金を決済する仕組みが利用される場合もあります。
ただし、
「仲介会社を経由する=必ずエスクロー」
というわけではありません。
また、
株式譲渡代金とM&A仲介会社へ支払う成功報酬も分けて考える必要があります。
M&Aが最終段階まで進んだら、
「誰が、誰に、いくら、どの口座へ支払うのか」
をクロージング前に明確にしておくことが重要です。
会社売却を検討している方へ
「自社を売却するとしたら、いくらくらいになる?」
会社売却を考え始めたら、まずは現在の企業価値を把握することが重要です。
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