はじめに
会社売却(M&A)を検討している経営者の中には、
「銀行からの借入が残っているけれど会社を売却できる?」
「会社を売ったら借金も買い手が引き継いでくれる?」
「銀行融資の個人保証はどうなる?」
と疑問を持つ方もいるでしょう。
中小企業では、設備投資や運転資金などのために金融機関から借入を行っていることは珍しくありません。
そのため、
「借金をすべて返済しなければ会社は売却できない」
とは限りません。
一方で、借入金の金額は企業価値や最終的な株式譲渡価格にも関係します。
また、オーナー社長が金融機関への借入について個人保証をしている場合には、会社売却時にその取り扱いを確認することが非常に重要です。
今回は、借入金がある会社のM&Aについて、売り手経営者が知っておきたいポイントを解説します。
借入金があっても会社売却はできる?
結論からいうと、
借入金が残っている会社でもM&Aによって売却できる可能性があります。
会社経営では、
銀行融資
設備ローン
運転資金の借入
などを利用することは一般的です。
そのため、買い手も、
「借入金があるから買収できない」
と単純に判断するわけではありません。
重要なのは、
会社がどの程度の借入を抱えているのか、
その借入に対して十分な収益力があるのか、
返済状況に問題がないのか、
といった点です。
株式譲渡なら借入金は基本的に会社に残る
中小企業M&Aで利用されることの多い「株式譲渡」では、
株主が保有している株式を買い手へ譲渡します。
会社そのものは存続するため、
会社が金融機関から借りている借入金も基本的には会社に残ります。
例えば、
会社に3,000万円の銀行借入がある状態で株式を譲渡したとしても、
原則として、その3,000万円が旧社長個人の借金になるわけではありません。
会社はM&A後も金融機関に対する債務を負います。
ただし、融資契約やM&Aの契約条件によって対応が必要になる場合があるため、個別の確認は必要です。
借入金が多いと株式の売却価格に影響することがある
ここで重要なのが、
「借入金も引き継がれるなら、借金がいくらあっても売却価格は同じなのか?」
という点です。
そうとは限りません。
M&Aでは、
会社の事業そのものの価値だけではなく、
現預金や有利子負債なども考慮して株式価値を検討することがあります。
非常に単純化すると、
事業の価値が1億円あったとしても、
多額の借入金を抱えている会社と、
ほとんど借入金がない会社では、
株主が受け取る株式譲渡代金が同じになるとは限りません。
そのため、
「会社の事業価値」と「自分が株式を売って受け取れる金額」は分けて考えることが重要です。
現預金も一緒に確認される
借入金を見るときには、
借金の金額だけを見るのではなく、会社が保有する現預金なども重要になります。
例えば、
A社:借入金5,000万円、現預金4,000万円
B社:借入金5,000万円、現預金500万円
では、
同じ5,000万円の借入金があっても財務状況は異なります。
そのため、
「借入金が5,000万円あるから売却できない」
と金額だけで判断する必要はありません。
会社全体の財務状況や収益力を確認することが大切です。
社長の「個人保証」は別問題
中小企業の会社売却で特に注意したいのが、
経営者による個人保証です。
会社が銀行から融資を受ける際、
オーナー社長が連帯保証人になっているケースがあります。
会社の株式を買い手へ売却したからといって、
個人保証が何の手続きもなく自動的に解除されるとは限りません。
会社を手放したにもかかわらず、
旧経営者の保証だけが残ってしまうことは避けたいところです。
そのため、
会社売却では株式譲渡代金だけでなく、
個人保証をどのように処理するのかについても確認する必要があります。
個人保証はどうやって解除する?
具体的な対応は、
金融機関との契約や買い手の信用力、M&Aの条件などによって異なります。
例えば、
買い手側の保証へ切り替える
借入金を借り換える
クロージングに合わせて借入金を返済する
金融機関から保証解除について承諾を得る
といった方法が検討されることがあります。
ただし、
買い手と売り手だけで決めれば保証が解除されるとは限りません。
金融機関との調整が必要になるケースがあるため、
M&Aの早い段階から確認しておくことが重要です。
不動産などを担保にしている場合も確認する
金融機関からの借入について、
社長個人が所有する不動産などを担保として提供しているケースもあります。
この場合も、
会社の株式を売却しただけで自動的に担保が解除されるとは限りません。
会社売却後に経営から完全に離れるのであれば、
個人保証だけでなく、
個人資産に設定された担保についても確認しておきましょう。
M&Aの契約でも保証解除について確認する
個人保証がある場合、
「買い手が何とかしてくれるだろう」
という状態のままクロージングを迎えるのは避けたいところです。
例えば、
誰が金融機関と交渉するのか
いつまでに保証解除を行うのか
クロージングまでに解除できない場合はどうするのか
といった点を確認する必要があります。
売却条件を交渉するときには、
株式譲渡価格と同じように、
個人保証や担保の解除も重要な条件として考えましょう。
役員借入金がある場合は?
中小企業では、
銀行からの借入とは別に、
社長自身が会社へお金を貸しているケースがあります。
決算書では、
「役員借入金」
などとして計上されていることがあります。
例えば、
資金繰りが厳しかった時期に社長が会社へ1,000万円を入金し、
そのまま返済されずに残っているケースです。
これは銀行借入とは性質が異なるため、
M&Aの際にどのように取り扱うのかを整理する必要があります。
クロージング前に返済するのか、
M&Aの条件に含めるのかなど、
案件ごとに取り扱いを確認しましょう。
逆に「会社が社長へ貸しているお金」にも注意
反対に、
会社から社長へお金が貸し付けられているケースもあります。
いわゆる役員貸付金です。
買い手からすると、
会社のお金が社長個人へ貸し出されている状態になります。
そのため、
M&Aの前に返済を求められたり、
株式譲渡価格の交渉材料になったりする可能性があります。
会社売却を考えているのであれば、
役員借入金だけでなく役員貸付金についても確認しておきましょう。
借入金がある場合に整理しておきたい資料
会社売却を検討し始めたら、
借入に関する情報を整理しておくことが重要です。
例えば、
金融機関名
借入残高
金利
返済期限
毎月の返済額
保証人
担保
融資契約書
などです。
複数の金融機関から借入をしている場合には、
一覧にしておくと会社の財務状況を把握しやすくなります。
また、
返済予定表や契約書なども準備しておけば、
M&Aのデューデリジェンスにも対応しやすくなります。
「借金を全部返してから売る」とは限らない
会社売却を考えたとき、
「まず借入金を全部返済してから買い手を探そう」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、
必ずしもそれが最適とは限りません。
借入金を返済するために会社の現預金を大きく減らせば、
会社の財務状況も変わります。
また、
通常の事業運営に必要な借入であれば、
その状態を前提としてM&Aを進められる場合もあります。
自己判断で大きく財務状況を変える前に、
M&A仲介会社や税理士などの専門家と相談しながら進めることが大切です。
まとめ
借入金が残っている会社でも、
M&Aによって売却できる可能性があります。
株式譲渡の場合、
会社の借入金は基本的に会社に残るため、
借金をすべて返済しなければ会社を売却できないとは限りません。
ただし、
借入金の金額は企業価値や株式譲渡価格を考えるうえで重要な要素になります。
そして、
売り手経営者にとって特に確認しておきたいのが、
個人保証や個人資産の担保です。
会社を売却したにもかかわらず、
旧経営者の保証だけが残ることのないよう、
M&Aの交渉段階から取り扱いを確認しておくことが重要です。
会社売却を考え始めたら、
売上や利益だけでなく、
借入残高、現預金、役員借入金、個人保証なども一度整理してみましょう。
自社の財務状況を正確に把握することが、
適切な企業価値を考える第一歩になります。
会社売却を検討している方へ
「借入金が残っているけれど、自社はいくらくらいで売却できる?」
会社売却を考え始めたら、まずは現在の企業価値を把握することが重要です。
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